冷めたローズヒップ

兄が沸かしてくれた紅茶も。

 

日暮れのコンクリートの様に冷めて。

 

砂糖を溶かすことさえ許してくれなかった。

 

暗闇の中。

 

僕を繊細に包み込むローズヒップの香りは母そのもので。

 

穴の空いた癇癪な心を癒してくれた。

 

塩水と混ざり合い複雑な風味を醸し出しているその茶葉の香りは。

 

僕そのものだった。

 

成瀬ルカ