増してゆく不快感。
夏の湿気と物騒な蝉の鳴き声が肺の中で下垂れるように循環して、とても情緒がよろしくない。
それは喉仏の中で雨漏りが起きているかのようで、自分の中で余分なハイオクを放出したいのだけれど。廃棄場所に困るあの感覚だ。
占いの結果は良く無かった。無情に照らし合わせた文字配列だが、
僕にとっては重要な道筋でね。
『僕の後ろに道はある。』と道徳とは対照的な価値観ゆえの行動が全ての元凶でもあって。謝ろうにも謝れない。取り返しのつかない喪失感が僕を襲う。
「遊園地で一人迷子になったかの様に、周囲に溶け込んでいけない人生は苦痛で。悲しいものなのだよ。」なんて人形に語りかけては返事のない戯れを楽しんでいる。
いつもは家の隅を埋める為の『オブジェ』でしかない人形も。今の僕には重要な『精神安定剤』に変わっていて。
何の為に人形を買ったのか?人形とは何なのか?なんて想像力を掻き立てては、疲れ。愛し合う様に手を足首に回し、眠りにつく。
占いを信じきっている訳ではないし。科学的な根拠もない。
ただ、自分の中でどこか。もどかしいと思う感情があって...
そのもどかしさは、綺麗な水の中に砂が混じった様な感覚を僕に味わわせた。
砂を取り出そうとコップを傾けても排水溝の中に溢れていくのは水ばかりで、肝心の砂は底で上を見上げているだけ。
一生このもどかしさが消えることは無いだろう。
誰かに説明された訳では無いが、それは自分の中での宿命だと思っている。
でもこのもどかしさが無ければ、明日に向かって足を進ませる事をやめてしまう様な気がして。
結果的に助かっているのかな。
成瀬ルカ 短編。